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画像提供:公益財団法人 味の素ファンデーション
日常時も非常時も活用できるフェーズフリーなデザインを暮らしの中に取り入れると、わたしたちの毎日はどのように変わるのでしょうか。地域主体の参加型料理教室支援パッケージ「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、PHASE FREE AWARD 2021で一般投票による支持を集め、事業部門のオーディエンスを受賞しました。
このプロジェクトは、いつもは料理に不慣れな方でも簡単にできる、体にやさしく美味しい、心と体の健康と地域コミュニティ活性化を促進する料理教室の支援ツールとして、もしものときは地域における炊き出しの実施に役立つ活動として、私たちの暮らしを支えてくれます。その具体的な活用シーンと優れた特徴をご紹介しましょう。
いつもは地域主体の料理教室開催を支援するパッケージ
いつもの暮らしの中で「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」がいつ・どこで・だれのために・何を提供してくれるプロジェクトなのかを具体的に考えてみましょう。
「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、“いっしょに作っていっしょに食べる”をコンセプトにした参加型の料理教室です。料理教室運営・安全衛生管理ノウハウやレシピなどのコンテンツ、調理ツールなども含めた支援パッケージとして地域の支援者に提供されてきました。
プロジェクトがスタートしたのは東日本大震災で被災した東北3県で、仮設住宅で問題となっていた健康や栄養に関する課題のほか、避難生活でバラバラになってしまったコミュニティの再興に貢献するためのものでした。
提供されるレシピは誰でも簡単に調理できる内容で、栄養バランスが良く高齢者が食べやすい量や味付けになっています。調理を通して健康や栄養の知識が身につくだけでなく、支援者も参加者も一緒に調理や喫食を行うことが、孤立防止やソーシャルキャピタル(社会関係資本:協調行動によって社会の効率性を高めること)の向上につながります。
また、地域の主催者が料理教室運営ノウハウを身につけることにより、一定期間の後方支援ののちは地域の実情に合わせた方法で自立的にコミュニティを育成していくことができます。
このように「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、地域主体の料理教室の開催を後方から支援するパッケージとして、私たちの心身の健康の質を高め、より良い地域コミュニティの形成に貢献してくれる存在です。
もしもの時も心身の健康を支えてくれる料理教室
次は、災害が発生したとき「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」がいつ・どこで・だれのために・どのように役立つのか具体的にイメージしてみましょう。
普段から料理教室に参加することが非常時にもたらすメリットには、個人レベルから地域レベルまでさまざまなものがあります。たとえば個人レベルでは、普段から栄養バランスの良いな食生活を意識し、健康な心と体を維持することによって、災害時に病気やケガで要支援者になるリスクを軽減することができます。
地域レベルでは、いつもの料理教室で培われた支援者や他の参加者との繋がりが、災害時の孤立を減少させるコミュニティとして機能します。また、料理教室で学んだ食と栄養に関する知識、集団調理や安全衛生管理のスキルを活かして、栄養バランスの良い炊き出しを行うこともできます。
被災地の避難所で提供される食事は菓子パンやおにぎり、仕出し弁当など炭水化物の割合が多く、必要な栄養素が摂取できない場合も多いものです。普段から自分が摂るべき栄養素や食事の量、味付けなどを意識しながら調理を行っていれば、非常時でも周囲の人といっしょに自分に合った食事を準備し味わうことによって、心身の健康を維持・向上できるのではないでしょうか。
このように「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、もしもの時も心身の健康維持の基礎となり、私たちがより安心・安全に暮らすことを可能にしてくれる料理教室です。
「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」が持つフェーズフリーな機能とは
日常時も非常時も幅広いシーンで活用できる「常活性」を備えていることがフェーズフリーな商品・サービスの特徴ですが、「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」で注目すべき機能はどのようなものでしょうか。
支援者や参加者が料理教室に継続的に参加することは、食と栄養のリテラシーを向上させること、健康な心身をつくり互いの交流を広げることにつながります。その効果によって日常時だけでなく非常時のQOLを向上させることが期待できます。
また、季節感のある美味しくヘルシーなメニューであること、身近な食材や調味料で料理を作れることは、普段から調理に取り組みやすいきっかけを提供している点で「日常性」の高さとして評価できます。
一般的な料理教室と同じ感覚でプロジェクトに参加できるので、内容がわかりやすいため「直感性」が高く取り組みやすい活動です。
非常時に備えた火を使わないレシピの提供のほか、防災・減災に向けた情報提供も行っているなど災害時のイメージを描きやすく災害への意識向上につながることから「触発性」も備えています。
気軽に参加できる活動として、地域にとどまらず職場などさまざまな場所で展開できること、8年半で3,771回という開催実績があることから、充分な「普及性」を備えているといえるでしょう。
フェーズフリーな暮らしを実現するコミュニティ活動とは
「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、いつもは心身の健康を支え、地域の繋がりを作る料理教室の開催支援パッケージとして、もしもの時は地域における炊き出しの実施に役立つ活動として、わたしたちの暮らしを豊かで心地よいものに変え、安心・安全を提供してくれます。
東北地方でこのプロジェクトを受け入れた地域では、住民同士の交流が深まり仲間ができる、食や栄養への関心が高まる、閉じこもりがちな住民の外出の機会になる、参加者の気持ちが前向きになるなど、高齢者の心と体の健康が増進し、地域コミュニティが活性化する傾向が見られました。
たとえば災害発生時に交通網や通信網が遮断された場合、救助や支援が得られるまでの間、地域の住民同士の互助・共助や安全衛生管理が必要となる場面も考えられます。そんなもしもの時がきても、いつも楽しく参加しているコミュニティがあれば、安心してお互いを支え合うことができるのではないでしょうか。
「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」のような「食」の分野だけでなく、地域で行われるあらゆる活動がフェーズフリーになることによって、私たち一人ひとりが抱える問題が普段から近隣の人々との活動を通じていつの間にか解決され、もしもの時にも役に立つ。そんなコミュニティづくりの可能性が見えてきそうです。