フェーズフリーアワード2021 最終審査委員会
「フェーズフリー」はまだ始まったばかりの概念であり、世の中への広がりはこれから。そのような状況において開催された第1回目となるフェーズフリーアワードでは、特定のカテゴリーのみではなく、プロダクト・サービス・ファシリティなどさまざまな領域を審査し顕彰することが定められました。また顕彰することにとどまらず、社会からの“フェーズフリーとは何か?”との問いに答えを出すことを目的に、多様な視点からの審査が行われました。
書類審査となる1次審査を経て、2次審査期間には複数回に及ぶ審査委員による評価やリモートでのディスカッションが行われました。また、受賞対象を決定する最終審査会は、感染対策を万全に行った上で一堂に会しての審査と議論が実施され、自由闊達かつそれぞれの専門分野からの評価や意見が交わされました。

写真・文:西原 真志

最終審査委員会-1

最終審査委員会終了後に、審査委員全員揃って初となる記念撮影

「フェーズフリーとは何か?」という問いへの想い

2021年8⽉11⽇(⽉)に、会場となる千葉⼯業⼤学スカイツリータウン®キャンパスにおいて、最終審査委員会となる「フェーズフリーアワード2021 第4回 審査委員会」が開催されました。
審査委員会の1~3回はオンラインにて開催されてきたため、審査委員9名が⼀堂に会するのはこれが初のタイミングとなりました。
この委員会では、審査委員の⾃由闊達で前向きな楽しい議論の中で、現時点における“フェーズフリーとは何か?” という問いに対して答えを出すという想いが共有されました。それぞれの領域で幅広い知⾒を有する審査委員が、各領域で“繰り返す災害” を解決する「フェーズフリー」なアイデアを⾒出すこととなりました。
しかし、事業部⾨40点、アイデア部⾨31点と多数が最終審査の対象となった⼀⽅で、その実⽤性や実現の可能性の難しさなどの⾯において、厳しい評価となったものも少なくありませんでした。

最終の審査委員会が初の対面での実施に

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審査委員からはさまざまな意見が発表されました

「充分な感染対策ができたこと、そして今回がフェーズフリーアワード第1回であることの重要性、また最終結論を出すにあたり実際にリアルな場で話していくことが⼤切だと思い、この場を設けての開催に⾄った」という、佐藤唯⾏審査委員⻑による挨拶で審査委員会が開会しました。
各審査委員は、書類選考を通過した応募書類を事前に精査。「汎⽤性」と「有効性」による評価に加え、持ち点10点を配分する評価を実施しました。
「汎⽤性」と「有効性」の総合評価を表すプロット図および合計得点による順位表を参考にしながら、上位の応募対象について、受賞に相応しいかどうかといった議論を深めました。
それまではリモートでの打合せや審査会の実施だったため、審査委員9名が実際に顔を合わせるのは初めてということもあり、冒頭には審査委員それぞれの所感や審査に対する想いといった挨拶が交わされました。
「フェーズフリーの定義とは何かなど、さまざまな意⾒があると思うが、この⼀つひとつのプロセスを⼤事にしていきたい(奥⼭審査委員)」「(第3回審査委員会から)いろいろ考えうなった3週間だった。この最終審査で次に繋がる答えを出したい(姜審査委員)」「現実化はこれから。今から構築していくことが⼤切(須﨑審査委員)」
それぞれの想いを胸にこれまでに重ねてきた評価に関する資料を元に議論がスタートし、アイデア部⾨、事業部⾨それぞれのGOLD、SILVER、BRONZE各賞の受賞対象の決定に⾄りました。

約4時間におよぶ審査委員による議論

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短い休憩時間にも審査委員同士が活発に議論

「汎⽤性」と「有効性」を組み合わせて総合点を評価していくという基準の再確認を⾏った後、アイデア部⾨の2次審査を通過した31対象についての論評と議論が交わされました。各審査委員がそれぞれの専⾨分野からの視点で候補対象に関する評価のポイントや、逆に不⾜している点などについて指摘し、議論が重ねられていきました。審査委員の専⾨分野と応募対象のカテゴリーの違いによる評価の差は、事前に⾏った点数評価だけでは埋めることができず、その場で⼀つひとつ議論を⾏っていくこととなりました。そして評価点の⾼い上位4対象に絞られ、その中で各対象の評価が⾏われ、3賞が決定されました。
この時点で予定を⼤幅に超える2時間半が経過し、事業部⾨へと移りました。2次審査を通過した40対象に関する評価・議論が進められ、対象が有するフェーズフリー性に関する評価のほか、時代や社会的背景を鑑みての評価、また「フェーズフリー」の⽅向性を⽰していくというフェーズフリーアワードの役割を果たせるかどうかなど、各審査委員による専⾨的な視点からの意⾒が交わされました。最終的に評価の⾼かった上位3対象に絞られ、満場⼀致で3賞が決められました。
フェーズフリーアワード初となる受賞者がこのような経緯で無事に決定したものの、「フェーズフリーとして優れた点を、合議でどのように収束させていくか」や「議論の対象となった実現性や独創性について、どのように取り扱い審査していくべきか」など、今後への課題もいくつか⾒えることとなりました。

「次につながる」有意義な評価・議論を行うことができた

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最後は挙手で受賞作が決定されました

アイデア部⾨と事業部⾨の審査が終了すると、次のフェーズフリーアワードにつなぐための審査に関する改善点、反省点などが話し合われました。
最後は佐藤唯⾏審査委員⻑による「本⽇は顔を合わせながら⾮常に有意義な議論ができた。いろいろとブレながらも広く話し合えたのは、やはりこうして集まれたからこそだと思う。これを糧にして、また次のフェーズフリーアワードに⽣かしていきたい」という挨拶で、フェーズフリーアワードの最終審査委員会が終了しました。
最終審査委員会から約2週間後の8⽉28⽇には、第5回審査委員会がオンラインで⾏われました。
その際には、オーディエンス投票の状況説明や、9 ⽉11⽇に開催される授賞式・シンポジウムについて情報が共有されました。また、当⽇の進⾏や受賞対象へのコメントなどに関する打合せのほか、会場が急遽変更となり「清澄公園内『⼤正記念館』」になったことなどが伝えられ、最終的な調整が⾏われました。このように実⾏委員や審査委員とで充分な準備を繰り返し重ね、次の記事で紹介する授賞式とシンポジウムが開催される運びとなりました。

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