『フェーズフリー』はマジックワード

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科 教授

阪本 真由美さん

2022年の第2回フェーズフリーアワードから審査委員を務める阪本真由美さん(以下:阪本さん)と、フェーズフリー協会代表理事の佐藤唯行(以下:佐藤)による対談がおこなわれました。今回は東京ビッグサイトで開催された『グッドライフフェア2024』の「フェーズフリー協会」のブースならびに「フェーズフリー特集展示」を舞台に、さまざまなフェーズフリー商品を見ながら『フェーズフリー』の今やこれからについてお話しいただきました。
(2024.10 実施)

写真・文:西原 真志

阪本さんとの対談-1

第4回フェーズフリーアワードで審査委員を務める、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授の阪本真由美さん(右)

『フェーズフリー』の浸透・拡大に貢献するフェーズフリー認証

―― 阪本さん
たくさんの人で賑わっていますね。「フェーズフリー特別展示」エリアもあるなんて、すごいですね。

―― 佐藤
今日はこの場に来ていただいてありがとうございます。阪本さんとの対談は3度目で、これまでに阪本さんの取り組みや考え方、また幼少期からの歩みなどに触れさせていただきましたので、今回は『グッドライフフェア2024』において、『フェーズフリー』を見ながらお話しできればと思ったんです。

―― 阪本さん
面白いですね。とても興味深いです。このフェーズフリー協会のブースに並べられているのは、フェーズフリー商品ですか?

―― 佐藤
そうですね。フェーズフリー認証品です。壁に貼った可愛らしい女の子のポスターに「P」のマークがありますけれど、これがフェーズフリー認証のマークですね。フェーズフリー認証はご存じでしたか?

―― 阪本さん
もちろん知っています。どれも個人的に興味のあるものばかりなのですが、エースのフェーズフリー認証を受けているリュックは実際に買って愛用しています(笑)。フェーズフリー認証があると、確かに購入の際のいい判断基準になりますよね。

―― 佐藤
そうなんですよ。フェーズフリー認証は、審査の申し込みをいただいた対象を認証委員会が明確な基準で審査をして、クリアした対象のみにマークが付けられるので、消費者目線でも安心だと思います。最近は特に、フェーズフリー認証品が選ばれるようになってきています。

―― 阪本さん
そうですよね、確かに安心感とか、おトク感もある(笑)。

―― 佐藤
ありますよね(笑)。でも実はですね……僕はフェーズフリー認証を実施することには反対の思いだったんですよ。

―― 阪本さん
えっ! そうなのですか。どうしてですか?

―― 佐藤
元々『フェーズフリー』って、みんなの気づきの連鎖のようなもので広がっていってもらいたいと思っていたんですね。自由にそれぞれの『フェーズフリー』が自然と広がっていくのが理想で、フェーズフリー認証があったら、特定の人たちだけのクローズドなものになってしまうと危惧していたんです。でも特にメーカーさんとか産業界の方々から、商品やサービスにフェーズフリー認証があったらいいという声を多くいただいて、背中を押されて実現したんですね。実際にスタートしてみたら、当初の思いは杞憂でむしろ多くの方々が参加しやすくなって、今ではどんどん広がっている状況なんです。

―― 阪本さん
SDGsに近いイメージかもしれませんね。勉強して取り組みをしている人たちにバッジを付与したり認証したり、似たような特質があるのかもしれません。フェーズフリー認証の良いところは、5つの評価基準を明確化して、他との違いが明らかに分かりやすい点ですよね。それでいながら、間口や解釈も自由で広くなっている。

―― 佐藤
おっしゃるとおりで、フェーズフリー認証の存在によって、逆に間口が広がっているんですね。『フェーズフリー』を浸透・拡大していくにあたって、フェーズフリー認証をスタートして本当に良かったと思っています。

※1
■ 阪本さんとの一回目の対談記事はこちら
https://jn.phasefree.net/2022/06/27/interview-aw2022-02/
■ 阪本さんとの二回目の対談記事はこちら
https://jn.phasefree.net/2024/03/01/interview-aw2023-03/

阪本さんとの対談-2

フェーズフリーアワード2023 の「事業部門silver賞」を受賞した「明治ほほえみ らくらくミルク」のブースにて

『フェーズフリー』のワードが付いている何かを選ぶと安心、というのは分かりやすくていい!

―― 佐藤
今回の『グッドライフフェア2024』では、『フェーズフリー』に取り組むいくつかの会社さんが集まった「フェーズフリー特別展示」というエリアがあるんです。フェーズフリー協会のほかに、「Jackery(ジャクリ)」「明治」「グランデックス」「エドギフト」「ビザイア」といった『フェーズフリー』を通してみなさんに安心や安全を届けている会社さんがブースを開いています。

―― 阪本さん
とても面白いです。いろんな形で『フェーズフリー』があるということが、感じられますね。

―― 佐藤
一つひとつは独立した会社だったり製品だったりですけれども、例えば「テグミー」と「明治ほほえみらくらくミルク」がコラボして、一緒になって子ども向けの『フェーズフリー』を考えていこうかとか、ヨコのつながりも広がっているんですよね。

―― 阪本さん
それは重要なことですよね。フェーズフリーアワードでもそういった新しいつながりとか可能性が拡大していますけれど、そういった広がりは嬉しいですね。

―― 佐藤
そのとおりです。このようにちょっと歩くだけでも、『フェーズフリー』にはいろんなカタチや可能性があることが分かります。

―― 阪本さん
そうですね。ミルクがあったりお菓子があったり、バッグやバッテリーがあったり、おもちゃとか調理器具とか……、色とりどりなのですが、どれにも『フェーズフリー』が共通としてあるのが本当に面白いですよね。

―― 佐藤
「ジャクリ」のポータブル電源とソーラーパネルは、持ち運べる上に、ほぼすべての家電が動かせるというもので、今回のフェーズフリーアワードでオーディエンス賞を受賞しています。ポータブル電源は多く存在しますが、初めて「ジャクリ」がフェーズフリー認証を取得したんです。

―― 阪本さん
そうなんですか。冷蔵庫とか大型の家電品へも給電できるのに、コンパクトですごいですね。そのあたりが評価されたのですね。

―― 佐藤
そう、日常時にも非常時にも価値を発揮するところが評価されたんですね。だからフェーズフリー認証マークが付いている。

―― 阪本さん
なるほど。その意味でもフェーズフリー認証が付いていると、それがどのようなものなのか、どのような価値があるのかが分かっていいですね。これまでずっと思っていたんですけれど、『フェーズフリー』って私、マジックワードだと思っているんです。『フェーズフリー』というワードが付いているプロダクトとかサービスを目安にすれば安心というのは、分かりやすいし良いですよね。

阪本さんとの対談-3

「フェーズフリー特集展示」をまわる阪本さん(右)と佐藤。「Jackery」のブースにて

この場に来て“新しい活動を仕掛ける楽しい方がいっぱいいる”とあらためて実感できた

―― 佐藤
阪本さんにはフェーズフリー審査委員を3年務めていただいていますが、今日の展示を見学いただいたことも含めて、現時点での『フェーズフリー』についてどのような想いを持っていますか?

―― 阪本さん
個人的にも『フェーズフリー』を発信しています。先日嬉しかったのは、友人が能登半島地震で被災して、そのうえ豪雨災害にも遭ったのですが、避難の時に持ち出したものを教えてもらったら、ソーラーランタンの「CARRY THE SUN®」(※1)がありました。

―― 佐藤
フェーズフリーアワード2022のオーディエンス賞を受賞したソーラーランタンですね。

―― 阪本さん
そうです。「オッ」と思いました。ふだんから気に入って使っていたランタンが、地震後の避難所生活でとても役に立ったので、豪雨のときにも持って避難したと。大変な中ではありますが、そういった「もしも」の暮らしを良くすることに、本当につながっていることを実感するときに『フェーズフリー』に関わって良かったなと思います。

―― 佐藤
今日一緒に見ていただいたフェーズフリー認証品も、ふだんの暮らしも豊かにしてくれて、もしもの時にも活躍してくれるものばかりです。そういった認知がどんどん広がって、実際に活用いただけるといいですよね。

―― 阪本さん
そうですよね。私は近々『阪神・淡路大震災から私たちは何を学んだか-被災者支援の30年と未来の防災』(慶應義塾大学出版会)という書籍を発刊するのですが、最終章の『「いつも」と「もしも」をつなぐ未来の防災』で『フェーズフリー』を紹介しています。『フェーズフリー』が広がるといいなと思っていまして。

―― 佐藤
ありがとうございます。まだまだ少しずつではありますが、そういった形で『フェーズフリー』を浸透させていきたいと思っています。

―― 阪本さん
フェーズフリーアワードだけでなくて、今日この場所に来てあらためて、自分たちで新しい活動を仕掛ける楽しい方がたくさんいらっしゃるのだと実感しました。

―― 佐藤
同感です。

―― 阪本さん
またモノだけでなくて、北海道の小清水町防災拠点複合庁舎「ワタシノ」(※2)とか、今治市クリーンセンター「バリクリーン」(※3)とか、施設やファシリティに活かされているのも、もっともっと知っていただきたいですよね。

―― 佐藤
日常の賑わいを生みだす施設が、非常時の住民の安心や安全を叶えるという。

―― 阪本さん
それを実現しているところがすごいですね。こういったモデルケースが他の場所などでも広がると、私たちの暮らしはもっと良くなるに違いないと楽しみにしています。

―― 佐藤
そのとおりです。引き続きぜひ力を貸してください。よろしくお願いします。今日もありがとうございました。

―― 阪本さん
こちらこそありがとうございました!

※1:https://aw2022.phasefree.net/award/pfaw2022b021/
※2:https://aw.phasefree.net/award/pfaw2024b008/
※3:https://aw2022.phasefree.net/award/pfaw2022b007/

阪本さんとの対談-4

対談と見学を終えフェーズフリー協会のブースの前で記念撮影をする阪本さん(右)と佐藤

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