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画像提供:豊島区
日常時にも非常時にも役に立つフェーズフリーな商品やサービスによって、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。「としまみどりの防災公園(イケ・サンパーク)」は、PHASE FREE AWARD 2021で事業部門のシルバーを受賞したフェーズフリーな公園です。人口密度も建物の密集度もともに高いことで知られる豊島区に、2020年12月に全面開園しました。
このエリア一帯は造幣局東京支局の跡地でしたが、豊島区からの要請に基づき、UR都市機構によって緑あふれる広々とした公園が整備されました。ふだんは憩いとにぎわいをもたらす広場として、いざという時には一時避難場所やヘリポートとして機能する、イケ・サンパークの具体的な活用シーンと優れた特徴をご紹介しましょう。
いつもは誰もがくつろげる憩いとにぎわいの広場
いつもの暮らしの中でイケ・サンパークがいつ・どこで・だれのために・何を提供してくれる公園なのか具体的に考えてみましょう。
日常時、としまみどりの防災公園は、平日のオフィスワーカーから週末の家族連れまで誰もが安心してのびのびと過ごせる広場として開放されています。芝生でくつろぐ人、ファーマーズマーケットで買い物をする人、カフェや可動式店舗で食事をする人、虫取り網を片手に走り回る子供など、楽しみ方は様々です。
最大の特徴は中央部の広々とした芝生広場で、周囲には様々な施設や樹木が配置されています。豊島区内の公園では最大級の敷地面積(約1.7ha)は、テニスコートおよそ65面分に相当します。
もう一つの特徴は、公設の公園でありながら園内にカフェが設置されマルシェが開催されていることです。Park-PFI方式の導入によって、民間事業者による飲食店等の公募対象公園施設の設置と、当該施設から生じる収益を活用した特定公園施設の整備・改修等を一体的に行っています。日頃からのにぎわい創出が公的な維持費の削減につながる仕組みです。
このようにイケ・サンパークは、豊島区という日本屈指の高密都市に、誰もがのびのびとくつろげる居場所と活気あふれるコミュニティを創出し、多くの人の日常をより豊かにしています。
もしもの時は災害発生時の一時避難場所やヘリポートに
続いて、もしもの時にイケ・サンパークがいつ・どこで・だれのために・何を提供できるのかイメージしてみましょう。
「としまみどりの防災公園」という正式名称からも明らかですが、この公園は震災などの際に帰宅困難者の一時避難場所やヘリポートなど、人々の命や暮らしを守る場所として活用できます。
一時避難場所としては約2,500人を収容可能で、公園周囲にはフェンス等を設けていないため誰もがあらゆる方面から逃げ込むことができます。近隣には木造住宅密集エリアもありますが、火災時にはシラカシの並木が延焼を防ぎ、避難者の安全を確保します。
また、非常用発電設備を備えているため、停電時でも速やかな電力供給が可能です。カフェや可動式小型店舗では炊き出しが行われるほか、常備するイベント用テントは災害用テントとなり、井戸水を活用した災害用トイレも開放されます。
中央部のフラットな空間はヘリポートとなって、園内の通路には大型トラックや緊急車両の乗り入れも可能なため、救援物資の搬入や重症患者の搬送もスムーズに行えます。
このように、イケ・サンパークは、災害の経過に応じて一時避難場所やヘリポートなどといった様々な防災機能を発揮し、私たちの命や暮らしを守ってくれます。
イケ・サンパークのフェーズフリーな機能とは
フェーズフリーな商品・サービスは日常時も非常時も幅広いシーンで活用できるだけでなく、従来の商品やサービス以上に私たちの生活の質(QOL)を向上させる機能を備えています。これらの性質を「常活性」と呼びます。
イケ・サンパークには、区内最大級の広さの芝生スペースやおしゃれなカフェなどがあり、一般的な都市公園と比べて「日常時QOL」の向上に大きく貢献できます。また、非常時においても一時避難場所やヘリポート、救援物資の集積・集配所等として機能し、私たちの「非常時QOL」を高めてくれます。
「日常性」の高さという点では、都会に暮らす人々の感性に合った空間デザインやサービスを提供しているため、普段から積極的に訪れたい公園として多くの人に支持されていることが評価されています。
この他にも、ゲートが四隅にありどの方向からも入園しやすいこと、広場を斜めに横切る歩道が舗装されベビーカーや車椅子でも通行しやすいこと、さらに園内に「IKEBUS(イケバス)」(池袋駅など区内主要施設を巡る電気バス)の発着所があり区内外からの来園が容易なことなど、多くの人が気軽に利用できる工夫が日常性を高めています。
また、中央に芝生スペースを、その周縁部に施設等を配置しているため、初めて訪れた人でもどこに何があるかが一目でわかります。また、ふだんは意識されない防災倉庫や災害用トイレ等もゲートの近くにあり、いざという時に利用しやすいレイアウトです。
日常時・非常時のいずれのフェーズにおいても、その時々に応じた利用方法がわかりやすい設計が「直感性」を高めているといえるでしょう。
「触発性」を高める要素としては、地域活動から防災まで様々なイベントの場として利用されていることが挙げられます。これはいざという時に助け合えるコミュニティの形成に役立ち、公園を利用する人々の災害に対する意識の向上に繋がっています。
多くの公園利用者がSNS等を通じて広く価値共有を行っている姿から「普及性」の高さを見てとることができます。
フェーズフリーな暮らしを実現する公園とは
「としまみどりの防災公園(イケ・サンパーク)」は、いつもは都心で生活する人々に憩いやにぎわいをもたらす広場として、もしもの時には一時避難場所やヘリポートとして活用できる公園です。
この公園の最大の特徴は、日常時に広々とした憩いの場を提供する芝生広場が、非常時にはヘリポートや一次避難場所となるフレキシビリティの高さです。公園はいつでも・誰にでも開かれた場所であるからこそ、その利用シーンが広がり機能が高まることによって多くの人の日常時および非常時のQOL(生活の質)を高めることができます。
「いつもの暮らしを豊かにしてくれる公園が、もしもの時にも命や生活を守ってくれる」という安心を身近な公園に感じられるようになれば、日常時でも非常時でもあなたの街の暮らしを支える機能が確実に向上するのではないでしょうか。
フェーズフリーのコンセプトをあらゆる場所に生かすことによって、誰もが住みやすい街をつくり、人々がさらなる安心を感じられる。そんな豊かさを実現することは、不可能ではないはずです。